自閉症・発達障害のある方を支援する福祉施設を大阪・高槻で運営

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第4回

共に在ること

 


 1987年5月に開設した「京都市横大路学園」は、京都市の空き缶再資源化施設を知的障害者通所授産施設として運用した全国で初めての事業でした。私はこの事業の開設準備を担当し、開設後は主任指導員として運営に携わりました。この事業にはさまざまな意義がありました。一つは京都市民生局と清掃局がその行政の枠組みを越えて、知的障害のある人たちの仕事を創造したことです。二つ目は「空き缶」「空きビン」の再資源化という市民生活の一つの流れの中に、障害のある人たちの労働が深く関わっているという点です。当時私たち利用者・職員は、空き缶再資源化作業を通して見えてくる市民生活のあり方や環境の問題など、さまざまな機会を通して発信していました。特に空き缶は「ゴミ」ではなく「資源=財産」であること、私たちは市民の貴重な財産をお預かりして、より価値のある資源へと活かし、同時に地球環境のために働いているのだという誇りを持って作業に取り組んでいました。当時で利用者の方には月々5万円の工賃と10万円のボーナスを年2回お支払いしていました。この工賃をお支払いできた一つの大きな要因は、アルミ・鉄の通常の流通経路の中で、中間業者を飛ばして、エンドユーザーと直接取引することが実現できた点にあります。
 「横大路学園」は事業の性格から京都市南清掃工場の敷地内に設置されました。学園開設後2カ月か3ヶ月ぐらい経ったある時、清掃工場長さんがひょっこり学園にお越しになられました。工場長さんはにこやかに次のようなお話をされました。
 「横大路学園さんが工場内に来ていただいて、本当に感謝していますねん。横大路学園さんが来てくれはってから、職員のマナーが良くなったんですわ。今までは職員の車の運転があろうて、工場内を猛スピードで運転していましてん。そやけど利用者さんが通りはるようになって、自然と注意して、安全に運転するようになりましてん。夏の暑い頃は、どうしても男の職場やから、上半身裸になって過ごしてる職員も多かったけど、そんな職員は減ってきましたわ。しらんまに意識するようになったと思いますわ。私も今まであんまり意識してませんでしたけど、街の中で、バス停のとこでバスを待ってる障害のある人を見かけると、『大丈夫かな』と心配するようになりましたわ」
 工場長さんの話を聞き、本当にうれしく思いました。本当に心の芯から癒されました。私たち法人の理念は、「地域に生きる」です。私たちは、「障害のある人たちが地域社会の中で、私たちと共に、当たり前に暮らしていくことのできる社会の実現」を目指しています。しかしこの工場長さんの話から、「共に生きる社会の実現」には、この「共に在る」という状況の実現が本当に大切なことなのだと教えていただきました。
 私たちは今、高槻市障害者地域移行支援センター「だ・かーぽ」を中心として、入所施設から地域生活への移行ニーズのある人たちの支援をしています。地域での暮らしの中で近隣住民の方々にさまざまなご迷惑をおかけしているのも事実です。しかしこれからも工場長さんのお話を心に留めながら、先ず「共に在る」という状況を大切にしつつ、「共に生きる」社会の実現に向かって皆様とともに歩み続けたいと思います。たとえ「問題」があっても、その「問題」を糧としながら・・・・・・。

掲載日:2007年10月25日