自閉症・発達障害のある方を支援する福祉施設を大阪・高槻で運営

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第28回

法人開設10年を迎えて ~連携支援モデルの創造を目指して~

 


 1998年2月、「社会福祉法人北摂杉の子会」が設立されて、今年で10年を迎えました。「地域に生きる」との法人の理念を掲げて、その理念の具現化を私どもの使命として、知的な障害のある人たち、自閉症・発達障害のある人たちの様々な支援ニーズに応えながら必要とされる支援サービスの創造に邁進してきた10年でありました。
 私ども法人の第1番目の事業である知的な障害のある人たちの生活施設「萩の杜」の開設から現在の事業規模へと発展してきましたが、それは事業規模拡大を目的化した結果としてではなく、障害のある人たちの支援ニーズに向き合ってきた結果としてあります。
 私どもは障害のある人たちが住み慣れた地域の中で、安心・安全に豊かに暮らすことのできる社会の実現を目指し、それを可能とするための実践の方向性として「必要とされる支援サービスと支援モデルの創造」と「連携支援モデルの創造」を支援の重要な柱として掲げてきました。
 車にたとえると「必要とされる支援サービスと支援モデルの創造」と「連携支援モデルの創造」は車の両輪です。
 運転手は障害のある人たち、利用者であり、一人ひとりの方々の様々な暮らしのニーズに沿って、車の進むべき方向性が決められていくことになります。
 私ども法人が掲げている支援の基本である「利用者主体」、「個別的支援」ということは、まさにそのような状態を意味しています。
 そして私たち職員は自動車整備士として障害のある人たちの快適なドライブ(快適なそれぞれの人生の創造)をサポートする役割を担っています。
 また純度の高いオイル(質の高いサービス)の提供や一人ひとりの運転手のニーズに沿って道案内(個別の支援計画を作成)するカーナビゲーターという重要な役割も担っていることになります。
 カーナビゲーターは様々な運行プラン(個別支援計画)を提案しますが、最終的な決定(自己選択・自己決定)は運転手に委ねられています。
 以上のような基本的な利用者支援の視点に立って、「必要とされる支援サービスと支援モデルの創造」については、この10年間、法人として一定の役割を果たしてきたといえます。
 その役割と成果は、高槻地域における施設入所支援、日中活動・就労支援、家族支援としての短期入所・日中一時支援、相談支援、ケアホーム・グループホームを中心とした地域生活支援などの知的な障害のある人たちの地域生活を支える包括的な支援サービス創造としてあります。
 そして、自閉症・発達障害のある人たちに対する支援サービスの創造については、大阪府、当事者団体などとの連携により、療育支援、就労支援を始めとして、日中活動支援などの大阪府モデル事業、法人独自事業として実現してきました。
 社会福祉法人の社会的な存在の意義は、開拓的先駆的役割を果たすことにありますが、自閉症・発達障害のある人たちへの支援については、私ども法人として一定の社会的責任を果たしてきたものと思っています。
 地域の中で、障害のある人たちやご家族の人たちが当たり前に、安心して、豊かに暮らしていくための車の両輪、その一つとしてある「必要とされる支援サービス」の実現については、このように私どもは一定の成果を積み上げることはできたと思っています。しかし、もう一方の「連携支援モデルの創造」については、今後の課題としてあります。
 私は、「連携支援モデルの創造」をして、障害のある人たちの地域生活における個別的な暮らしの質を高め、より質の高いサービス提供が可能となると思っています。
 現在、高槻地域ではすでに就労支援、相談支援機関などの支援者レベルでの支援者連携が様々なかたちで障害のある人たち一人ひとりのニーズを中心に据えて、構築されつつあります。
 今後、私ども法人としては、そのような支援者間の連携を大切に育て、障害のある人たちに対する連携支援モデルの更なる創造と、その構築に向けた他の事業者、行政、支援者の皆様方との協働を積極的に進めていかなければならないと思っています。
 そして、社会福祉事業者、支援者間の効果的な連携支援が可能となる地域的な仕組みを「かたち」にすること、すなわち、「連携支援の仕組みを創造する」ことを、私ども法人の「これから目指すかたち」の一つとして掲げていきたいと思います。

掲載日:2008年10月16日