Home
法人のご案内
各施設のご案内
松上利男の一言
お知らせ
プロジェクト
イベント・講座案内
採用情報
ボランティア募集
機関誌
リンク集
update情報
お問い合わせ
よどのコロッケ
カフェBe
HOME


平成19年度厚生労働省障害者保健福祉推進事業
『自閉症・発達障害者のスキル&モチベーションを高めるOJT/Off-JTおよび管理方法の開発』

事業化の流れを通して (客員研究員 関原 深)

1.はじめに
 社会福祉法人北摂杉の子会では、平成18年度に厚生労働省障害保健福祉推進事業として、「実業を通じた自立型福祉施設の就労支援力強化に関する研究」を受託しました。この研究では、自閉症・発達障害の方々の就労支援力強化と必要な支援について、ランチ弁当作りの実践を通じて、成果をまとめました。この研究を経て得られた知見は多くあったのですが、特に重要なのは下記2 点だったと思われます。
@“役割期待”がスキル& モチベーションを高めるということ
A自閉症・発達障害の方の能力は、特に「丁寧」なことが付加価値に繋がる職務で発揮されること
 これを受けて、自閉症・発達障害の方の能力が強みとなり、かつ付加価値が高い業務を、北摂杉の子会の自主事業として成立させることを最終目的とし、その過程において必要となってくる「スキル」「モチベーション」の向上をめざして、平成19年度は「自閉症・発達障害者のスキル&モチベーションを高めるOJT/Off-JTおよび管理方法の開発」というテーマで厚生労働省より受託しました。結果として社会福祉法人の自主事業立上のモデルづくりにもなることを目論見ました。この事業化の流れを通して本プロジェクトを紹介したいと思います。

2.プロジェクトの概要
〈基本的な考え方……スキル・モチベーションを高めるために〉
 ひとつの事業を軌道にのせることにより、スピード・品質など、市場から求められる環境をつくり、必然的に引き起こる役割期待からモチベーションをあげ、モチベーションをあげることによりスキルを向上させる、という好循環をめざしました。
〈商品の設定〉
 自閉症・発達障害者が取り組んだ場合に、より成果のあがりやすい商品を対象とすることでモチベーション向上を期待できると仮定し、「丁寧さ」が付加価値に繋がるもの、という要件を中心に検討しました。平成18年度の研究にて、丁寧さが活かせる高付加価値業務の抽出を行ったので、その資料を活用して、あらゆる商品・サービス取組の可能性について議論しました。
 結果、食の安全が叫ばれ、衛生管理の徹底が今後のカギを握る中、自閉症・発達障害の方の徹底した衛生 管理能力は今後の競争優位になること、また昨年度お弁当作りをしていた経験も活かせることから、食品を中心に検討を行った結果、最終「一口サイズのコロッケ」を商品としました。
〈商品開発〉
 商品開発の中でも重要なのは、「商品のコンセプトづくり」および「生産品質の安定化」でした。いくら能力を活かしても売れない商品を作っていては意味がなく、モチベーション向上にもつながらないため、家族会の皆様にもご協力いただきながら、レシピの改良
と生産品質の安定化を図りました。
 PJメンバーの田端主任のコンセプトメイクにより「とにかくおしゃれで、おいしくて、お酒に合う」ものを作ろうと努力を重ね、最終的には、梅しそ、タマゴ、クリーム、肉じゃが、枝豆、チーズおかかの6種類のコロッケを商品化することにしました。
 一口サイズのコロッケを作るには、均質に具材が混ざったタネを、20g ± 1g の範疇でまるめるといった丁寧な作業が必要になります。自閉症・発達障害の方にとっては説明しただけでは「計量」や「成形」のイメージがつかみづらく、週のうち作業日でない日にはOff-JT として粘土で計量・成形の訓練を行うことにより計量および成形のイメージづけを行いました。また作業日においては順に注文量が増えていくことにより作業にも慣れてスピード・成形精度ともに向上していきました。注文の多い日は500個を超す作業になるのですが、OJT とOff-JT を組み合わせて行ったことによりスキル面での向上が得られ、厨房では手慣れた手つきでどんどんきれいなコロッケが仕上がるようになりました。
厨房内様子
電子秤
丁寧に丸めてトレーへ
半製品(枝豆コロッケ)

〈事業化準備〉
 コロッケの事業化を進めるに当たっては、厚生労働省「食品等事業者が実施すべき管理運営に関する指針」に準拠させて、保健所と相談しながら進め、最終的に「惣菜業」の営業許可を取得しました。
 また、作業に集中できる環境によりスキルを向上させる目的から、働きやすい厨房作りとして、昨年度同様、構造化したツール等を作成し環境支援に努めました。
<環境支援一例>
左)各種ボール・トレイに色テープを貼り付け、片づけを間違わないように工夫
右)収納後の写真を添付し、最終確認できるように工夫
 
3.成果
〈テストマーケティング〉
 12月に営業許可が取れる目途がついた段階から、テストマーケティングに協力いただける店舗の開拓をしました。丁度、商品コンセプトが店に合う、ということで、居酒屋とキッチンバーの2店で採択いただくことになりました。テストマーケティングでは、荷姿(含温度管理)、決済、品質、顧客評価等の確認を実施しました。
 顧客評価も上々で、例えばキッチンバーでは、販売開始時200個/週の仕入れでしが、その3週間後には300個/週の仕入れとなりました。特に女性客には梅しそコロッケが、男性客には枝豆コロッケが人気のようです。G L O B E のマスター小林さんからも「おいしいと言ってくれるお客さんが多い」と本当に“普通”に人気商品になりました。
 本プロジェクトでは、モチベーション向上をねらい、客先での声を積極的に伝えるようにしました。結果、自分たちの作業が最終顧客の声につながっていることを知って、さらなる励みとなり、より正確に、より早く、より見栄えよく、衛生管理にも余念なくと、自立的にモチベーション・スキルを向上させていくという好循環が生まれました。
Kitchen Bar "GLOBE"(大阪:北新地)での様子
〈賃料換算〉
 11月から2月までの生産・販売状況より、概算利益(設備の償却を使用日のみ負担するものとして設定)を算出し、これを実際に製造に携わった方の投入時間で除した「概算賃料」を算出しました。その結果、時給に換算すると約390円、設備償却を考慮しない場合では約460円まで向上しました。これは、家族会・職員の内部販売においての単価なので、直接小売まで実施した場合はさらなる収益性向上につながる余地を残していると思います。
〈モチベーションの変化〉
  昨年に続き、本年度も厨房では、利用者の方々それぞれが能力を発揮し、厨房に入って作業をしたいという高いモチベーションを維持していただきました。今年度は現場での直接指導はもちろん、指導者の講習会受講や、面談、調理場外における実技練習等といったOff-JT の要素も取り入れて進めました。プロジェクトとして計画的に取り組んだこともありますが、ご家族の方々のご協力をはじめとする、多くの要素も重なって、結果、好循環が生まれたものと思われます。自分で食べておいしいし、人からおいしいと言われる→うれしい→がんばる、といった評価のフィードバックが早いコロッケという商材が奏功したのかもしれません。

4.今後の取組(事業展開)
 施設の制約により、惣菜行としての事業展開を中心に考えるのが現実的です。であるならば、収益性を高めていくためには、独自店舗による販売を実施していく必要があります。地域資源を活用しながら、地域と共生していけるような店舗づくりを意識したいと考え
ています。
  また、独自店舗による販売をするにあたっては、商品ブランドづくりが不可欠です。これもテント販売等でのテストマーケティングによる検証を重ねて進めていきたいと思います。

  最後になりましたが、このような機会を頂戴し、誠にありがとうございました。厨房に入っていただいている利用者の方、御家族・家族会の皆様、職員の皆様をはじめ、関係各位の多大なるご協力に、この場を借りて御礼申し上げます。この取組が好循環の契機となり、ひいてはインクルージョン社会創造へと繋がっていけばこの上ない幸せです。重ね重ねありがとうございました。

<もどる>


Copyright (C) 2009 Hokusetsu suginokokai, All rights reserved.