第51回 制度の活用と支援サービスの創造

 今年8月、法人職員研修会に、西宮市社会福祉協議会障害者生活支援グループ長の清水明彦さんを講師としてお迎えしました。
 清水さんには、「大変重い障害のある人たちの本人主体の地域生活支援〜青葉園の実践を通して〜」のテーマで、大変重い障害のある人たちに対する西宮市での本人を中心に据えた地域生活支援の実践について、お話をして頂きました。
 1981年に大変重い障害のある人たちを支援する活動拠点として「西宮市立青葉園」(法外施設)が開設しましたが、それに至るまでの本人を中心に据えた親御さんと支援者たちの実践や現在までの地域生活を支える支援の仕組み作りとその実践について熱く語られる清水さんのパワーに職員全員が聞き入り、様々な気付きや学びが得られました。
 清水さんのお話の後、大変重い身体と知的に障害のある人たちを支援している当法人事業所「ぷれいすBe」の支援員と作業療法士、清水さんとのフリーディスカッションを行ないました。
 その時、会場から清水さんに、「大変重い障害のある人たちに対する支援を行う中で、様々な制度的な課題があったと思いますが、どのようにされたのですか?」との質問がなされました。
 清水さんは、「障害のある人たちの支援を実現するために、使える制度はうまく使えば良いし、ひん曲げても使えるものは使ったら良いと思うんです。なければ無いで、自ら作れば良いんです。障害のある人たちのニーズを前にして、私たち(支援者)はできない事柄ばかりを上げて、結局、ニーズに応えようとしない。どのようにすればできるのかを絶えず考えて支援することが重要なんです」と即座に答えられました。
 講演の後、私は何名かの職員に講演についての感想を聞きましたが、全ての職員が特にこの清水さんの一言に感銘を受けたとのことでした。
 皆様もご存知のように、私たち法人は、「地域に生きる」との理念に基づいて、法人開設以来、「障害のある人たちが地域の中で、家族、友人、隣人など多くの人たちと共に、普通の暮らしが実現できること」、その実現に取り組み続けています。
 特に制度の谷間にある自閉症など発達障害のある人たちの支援や不十分な支援サービスの中で、困難な暮らしを強いられている大変重い障害のある人たちの支援に向き合ってきました。
 私たち法人の初めての事業である生活施設(障害者施設入所支援事業)「萩の杜」では、制度的に大変厳しい中で、親御さんの大きな支援を受けながら、小グループでの暮らし「ユニットケア」と働く場と住まいの分離「職住分離」という先駆的な実践を行なっています。
 また自閉症など発達障害のある人たちに対する支援についても、その支援制度が不十分な中で、支援サービスを創造して、その人たちのニーズに応える取り組みを続けています。
 例えば、現在大阪府から補助を受けて運営している発達障がい療育等支援事業(「自閉症療育センターwill」「自閉症療育センターLink」)は児童デイサービス事業の制度を活用して、その上に大阪府からの補助金を上乗せして、広域的な発達障害のある幼児・学齢期に対する専門的療育機関としての役割を果たしています。
 この制度設計は私ども法人から大阪府への提案によって実現したものです。
 現在、施行されている障害者自立支援法の評価はともかくとして、私たち事業者や支援者に常に求められていることは、真摯に利用者のニーズや思いに向き合いながら、そのニーズや思いを実現するためにどのように実践すべきか、即ち、その一つの実現のために、現在ある制度をうまく活用することや、制度が無ければ必要な支援を創り出していくことが強く求められていると思います。
 清水さんが話された「制度をひん曲げてでも利用者のために活用すること。制度が無ければ作ればいい」という事業者・支援者としての実践の原点を再確認して、明日からのより良い実践を積上げて行きたいと思います。
 そして、私たち法人の職員と共に、清水さんの一言を受け止めて、社会福祉法人としての社会的責任のあり方と私たち支援者の原点とは何かについて、もう一度見つめ直したいと思っています。

掲載日:2011年11月10日


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