第50回 大阪府発達障がい療育等支援事業の継続・発展を願って

1.大阪府における発達障害者支援の歩み
 皆さんもご存知のように、2004年12月10日に「発達障害者支援法」が制定され、それまで長年にわたり福祉の谷間で取り残されてきた発達障害のある人たちに対する定義付けと法的位置付けが初めてなされました。
 この法律制定の原動力となったのは、言うまでもなく障害当事者を中心とした家族の方々、関係支援団体、議員立法としての法案成立に努力された多くの国会議員の方々厚労省職員の皆様の献身的な働きの賜物であると思っています。
 そして、この法律によって、「発達障害の早期発見」「発達支援を行うことに関する国および地方公共団体の責務」「発達障害者の自立および社会参加に資する支援」が明文化されました。
 一方、大阪府における自閉症・発達障害者に対する取り組みは、当事者団体である日本自閉症協会大阪府支部役員の方々、児童精神科医師の方々による大阪府に対する粘り強い働きかけによって実施された発達障害に関わる全関係部局職員の勉強会によって、その第一歩が踏み出されました。
 自閉症協会大阪支部役員さんを中心として、私たちは、大阪府庁に自閉症・発達障害施策の担当窓口を設置するように求めていましたが、それに連動して取り組まれたのが、この勉強会でした。
 その後、大阪府は、「発達障害者支援法」制定に先立つ2002年度より国の予算補助として制度化された「自閉症・発達障害支援センター」(現「発達障害者支援センター」)をその初年度から開設するなど、全国に先駆けて積極的に発達障害のある人たちと家族に対する支援施策を創設しました。

2.療育等支援事業の始まり
 大阪府は、特に発達障害のある人たちへの支援で、「早期診断・療育体制の構築」を対策の重要な柱として掲げ、2003年には、増え続ける大阪府立松心園での診断・療育支援待機者の解消を目指して、「自閉症児療育強化事業」を府担独事業として創設しました。
 私たち法人は、「自閉症・発達障害支援センター」とともにこの事業を受託し、運営を開始することになります。
 この府単独事業「自閉症児療育強化事業」は、2005年4月から「発達障がい療育等支援事業」として、児童デイサービス事業に府単独補助金を上乗せして、専門的療育支援体制の整備に向けた取り組みが新たにスタートすることになります。
 その後、大阪府は更に、「早期診断・療育体制の構築」に向けて、府下6医療圏域ごとに1箇所の「発達障がい療育等支援事業」を2008年度までの整備に着手しました。
 私たち法人は、現在、「自閉症療育センターwill」(三島圏域)と「自閉症療育センターLink」(北河内圏域)の2箇所の「発達障がい療育等支援事業」を大阪府からの事業委託を受け運営をしています。
 このような大阪府の着実な療育支援についての取り組みの結果、現在年間360名の発達障害のある子どもたちに対して、個別的評価に基づいた共通の療育プログラムによる発達障害の特性に合わせた専門的発達支援が6療育等支援事業所で提供されるまでになりました。
 また、この取り組みは、発達障害のある子どもたちへの支援に留まらず、家族支援や圏域内市町村における就学前通園事業従事者に対する実地研修など、人材育成にも成果を積み上げてきています。
 大阪大学医学系研究科保健学専攻永井利三郎教授はこの6療育拠点事業の評価を行い、「療育等支援事業が本人・家族共に極めて有効である」との調査結果を報告されています。

3.療育等支援事業の支援機能継続の危機
 このような大阪府における全国的にも注目される極めて先駆的な発達障害のある子どもに対する専門的療育支援体制整備事業が、昨年12月、「障害者自立支援法改正法案」の成立を一つの契機として、事業の継続が難しくなってきました。
 その経緯について以下、詳しくご説明いたします。
 「障害者自立支援法改正法案」において、「障害児支援強化」が打ち出され、現在「障害者自立支援法」でサービス提供がなされている「児童デイサービス」等の児童支援事業を「児童福祉法」に統合・再編し、新しいサービス事業として、来年4月から実施するという法改正がなされました。また、事業の実施主体が市町村になります。
 この法改正により、現在児童デイサービス事業をベースとして療育支援サービスを行っている「発達障がい療育支援等事業所」は、4月から「児童福祉法」の「児童発達支援事業」としてスタートすることになります。
 この制度改革により、障害児に対する支援体制整備の責任が市町村が担うことになり、その結果、身近な地域で療育支援が提供されることになることから、私は基本的にこの法改正の趣旨と方向性には賛成しています。
 しかし、この制度改革が「発達障がい療育等支援事業」のあり方に大きな影響を与えることになりました。
 大阪府は、この制度改革を契機として、従来の「児童デイサービス事業」が新たに「児童発達支援事業」となり、その実施主体が市町村となることから、大阪府が従来圏域事業として位置付け、府が事業運営に上乗せしてきた補助金を打ち切るという方針を出してきました。
 大阪府は発達障害児に対する専門的療育支援体制構築に向けて、1箇所の療育等支援事業所に年間約700万円の補助金を出していましたが、私たち事業者にとっては、この補助金がなくなれば、従来からの個別的専門的な療育支援の提供や市町村の就学前通園事業等従事者に対する人材育成等の取り組みができなくなります。
 またこの事業運営のために必要な職員を雇用・育成し配置しています。
 大阪府は、全国に先駆けて発達障害児者支援の重要な施策としてこの「発達障がい療育支援等事業」を実施してきました。また一定の成果が出てきた段階でもあります。
 大阪府のなすべきことは、その成果を踏まえ、今後の大阪府における広域的な療育支援体制の構築のあり方を示すことであり、市町村との協働の中で、更なる体制構築に向けたあり方を示すべきであると考えます。
 しかし、その府としての責任を曖昧にした中で、一方的、拙速に市町村に療育支援の責任を転嫁することは責任放棄というしかありません。
 この府の決定は、事業仕分けによる歳出カット以外に私はその理由を見出すことができないでいます。
 当然のこととして、府は広域行政を進める立場、責任から、この「発達障がい療育等支援事業」の継続・充実に真摯に取り組むべきであると考えますし、市町村もその責任において、より積極的に発達障害児者に対する支援体制整備とその構築に取り組むべきであると考えています。
 そして、何よりも府・市町村が連携・協働して、その取り組みを進めることが重要であり、行政の谷間で発達障害児者や家族が支援サービスを受けることができないような状況は絶対に回避すべきであると思っています。

4.私たち事業者、当事者団体の動き
 大阪府の「発達障がい療援等支援事業」担当課職員の方々は、大阪府の事業見直しの方針を受けて、現在、事業の市町村への移行のための市町村に対する説明を行なっていますが、多くの市町村が6拠点の活用と費用負担について検討中であるとしています。
 市町村としても府の事業を法制度の変更を理由に突然、一方的に事業の実施と費用負担を提案されても結論が出せないのは当然のことです。
 現在、事業の来年度以降の運営の見通しが持てない中、私たち事業者と利用者・家族は不安と怒りの中にいます。
 事業者としては、6月1日付で大阪府橋下徹知事に対して要望書を提出しています。
 要望は、「発達障がい療育等支援事業継続のための予算措置を講じること」と「市町村事業となる『児童発達支援事業所』へのスムーズな移行について、府として責任を持って市町村への支援と調整を行うこと」の2点のについて、要望をしています。
 同時に、自閉症協会、LD親の会や地域の親の会など当事者団体も府と市町村に対して、事業の継続を求めた要望活動を行なっています。
 また児童精神科・小児科等、発達障害児の支援に関わっておられる医師の皆さんも知事に対する要望活動を行ないました。
 府議会の複数の政党・会派からもこの事業の継続を求めた知事宛の要望書を提出して下さっています。
 高槻市議会でも同様の趣旨により、全市議会議員の賛成を得て、知事に対する意見書の提出がなされました。
 私たちは、来年度から圏域事業としてある「発達障がい療育等支援事業」の機能が無くなれば、たちまちサービス提供事業所がない市町村が確実に生まれるという見通しの中で、支援ニーズがあってもサービス利用ができないというよう状況や専門的支援に関わる人材育成・確保等、市町村格差が生じ、大きな問題になると考えています。

5.最後に
 大阪府は「発達障害者支援法」制定以前から、特に発達障害児に対する「早期診断・療育支援」体制整備とその構築のための取り組みを担当部局の職員の方々が中心となって、当事者団体や関係する医師、専門家、私たち事業者と共に協働して積み上げてきた歴史があります。
 現担当部局職員の方々も何とか「発達障がい療育等支援事業」の機能を継続、発展させていきたいとの思いの中で、府内、市町村への働きかけをして下さっています。
 市町村就学前通園事業所等従事者に対する研修事業等の機能については、府として予算措置を行い、存続させる計画でいますが、その中核となる専門的療育支援機能の継続が危うくなっています。
 私たち法人としては、法人の社会的使命として、この困難を乗り切り、厳しい状況であっても経営努力の中で、事業を継続していく決意を固めています。
 多くの皆様がこの「発達障がい療育等支援事業」の重要性を理解して頂き、事業継続に向けた動きを私たちと共にして下さることを心からお願いいたします。

掲載日:2011年9月20日


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