第32回 今年、私の心に沁みた一言

 毎年私の親友である香里カトリック教会の神父である矢野吉久君からクリスマスカードが送られてきます。
 今年のクリスマスカードのメッセージの中に、マザーテレサがいつも唱えていたという聖フランシスコの祈りの一節が書かれていました。
 「神よ、私を平和のために働く者として下さい。憎しみのあるところに愛を、争いのあるところに赦しを・・・・・ 絶望のあるところに希望を、闇に光を、悲しみのあるところに喜びをもたらす者として下さい。・・・・・」
 世界中で、人々の対立と殺戮が繰り返され、貧しさで苦しむ人々がますます増え、飢餓で6秒に一人の子どもが今このときにも亡くなっているという現実に向き合うとき、このメッセージを受け止めながら、「この一年間、私は何をなしてきたのか?また来年、何をなさなければならないのか?」と深く考えさせられました。
 そして同時に、マザーテレサから社会福祉法人「訪問の家」日浦美智江さんの講演での印象に残った言葉が甦ってきました。
 日浦さんは、日本で初めて医療的ケアが必要な重度障害者通所授産施設「朋」を横浜市栄台で開設された先駆者として有名な方です。
 今年の9月に「医療的ケアと自立を考えるシンポジウム」が大阪で開催されましたが、その基調講演「地域で当たり前の生活を過ごせるように」の中で、日浦さんは、マザーテレサの言葉を引用され、「朋」開設に伴う地域住民に対する説明会での思いを語られました。
 施設建設のためには地域住民の同意が必要ですので、地域住民に対する「説明会」を開かれたのですが、多くの住民の人たちから反対の意見が出たそうです。
 そのときの思いについて、「マザーテレサは、『愛の反対の究極は無関心である』といっています。私は説明会で多くの住民の皆さんが集まってこられ、多くの方から反対のご意見を頂きましたが、『朋』に対して無関心ではなかった。関心を持っていただいたという思いを持ちました」と話されました。
 そして、糸賀一雄先生の「この子らを世の光に」という言葉を引用されて、「世の光となるためには、先ず人々が暮らす地域に障害のある人たちが『在る』ことが前提です」と続けて語られました。
 私は、矢野君からのメッセージを読みながら、日浦さんの講演会でのこの話を思い出し、聖フランシスコの平和の祈りと重なるものを強く感じました。
 日浦さんは、このような苦難の中から、大変重い障害のある人たちが地域で当たり前に存在し、暮らすことの実現に取り組まれ、現在、地域の中に多くの活動拠点やグループホームなどの暮らしの場を創造され続けておられます。
 シンポジウムの前夜に懇親会があり、日浦さんとお話しする機会がありましたが、物静かで、誠実で、謙虚なお人柄の方でしたが、同時に、これまでの実践から大変重い障害のある人たち一人ひとりとの出会いを大切にされ、「地域で共に生きる」という熱い思い、信念の中で、実践を積み上げられている強さを感じました。
 今年一年を振り返って、日浦さんの講演でのこの一言は、私にとって最も心に沁みる一言になったように思います。
 来年4月、私ども法人は、「高槻市つきのき学園」と「高槻市かしのき園」の事業を継承する仮称「つきのき・かしのき統合施設」を開設して、医療的ケアの必要な大変重い障害のある人たちの地域での暮らしの支援を始めることになりますが、日浦さんから頂いた貴重な一言を大切にして、新しい出会いと暮らしの創造に取組んでいきたいと思います。

掲載日:2008年12月26日


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